食事、コンピューター、インドネシアについてのひとり言。 ときどき人類学なども。
[2025-05-06] 『若い女の死』(ジョルジュ・シムノン)を読んだ —かわいそうなロニョン
『若い女の死』 () を読みおわった。 どうやったらこんなに上手に物語を語れるのだろう。 ある女が殺された。彼女についてまったく何もわからっていない。 そこから、 地道な捜査をつうじて、 彼女という女性にじょじょに肉体がやどっていく、 言ってみれば、それだけの単純な筋なのだ。 しかし、一回読み始めると、 もう止めることができなくなってしまう。 子どもたちが死体さがしにでかける、という 単純しごくなプロットだけで、 ぐいぐい読者をひきずっていく あのスティーブン・キングのような力だ。
もちろん、 あの不機嫌な警部ロニョン [–アメリカ人がパリで我が物顔で大暴れする回 (シムノン 2012) (『メグレと生死不明の男』)に登場していた、 あの陰気なロニョンだ–] という魅力的な登場人物が、 この本の魅力の大きな部分ではあるが。