Markdown で文章を書く

Satoshi Nakagawa

2021-08-08

1 はじめに

M$Word は捨てなさい! 商用の契約にしばられた ファイル形式ではなく、 世界に開かれたプレインテキストを使いましょう。

そして Markdown 記法を使いましょう。 とっても簡単です。

いまは使う人はすくないかもしれませんが、 初期のころの email で使われた記法があります。 コトバの前後を * でかこんで強調したり、 前後を _ でかこんで、そのコトバに下線があることを 示唆したりしました。 この記法を発展させたのが markdown 記法1 です。

2 5分間入門

お好きなエディタ をつかってください。 ファイルを作成しましょう — bar.md2 (名前はなんでもいいです)3 という名前とします。

具体的にはつぎのようにします。

先日のメール をみて、 VS Code をインストールしてください。 もし、インストールが面倒だと思うならば、 ウェブからも使えます。 ブラウザで https://vscode.dev/ にアクセスしましょう

VScode エディタ
VScode エディタ

さて、エディタで新しいファイルを作ります。 紙に(プラスサイン)のアイコンを押します ファイル名の入力がうながされますので、適当な名前 (bar.md) を入力します 右の大きな画面で、入力がうながされますので、 そこに書いていきましょう

2.1 タイトルと構成

まずはタイトルを書きましょう。

---
title: 人類学を自然化する
subtitle: ミリカンの誤解
author: Satoshi Nakagawa
---

つぎに、だいたいの枠組をつくってしまいましょう。


# 序

# ミリカンの哲学

## ミリカンはだれか

## ミリカンの生物学とトマセロの生物学

# ミリカンと人類学

## ANTという人類学

## どうしたこうした

# 結論

# 参考文献

できあがったバージョンでは、 # は章、 ## は節、 ### は小節として表示されます。

2.2 文字飾り

それではさっそく書いていきましょう。



この論文の目的は、
ルース・ミリカンの自然主義的哲学を
人類学に応用する仕方を議論する。

わたしが「人類学」ということばで意味するのは、
たとえば
E.E. Evans-Pritchard の *The Nuer*
であり、
E. R. Leach の *Political Systems of 
Highland Burma* [@leach-kachin]
なのだ。

一つの段落の中の改行は無視されます。
そして、文字の装飾も簡単です。
ボールド もできますし、
*イタリック* も簡単です。
~打ちけし線~ もできます
下付き、上つきも以下のようにすればOKです。
H~2~O とか 4^2^

以上のようにして書いたものが、 次のように出力されます。4


この論文の目的は、 ルース・ミリカンの自然主義的哲学を 人類学に応用する仕方を議論する。

わたしが「人類学」ということばで意味するのは、 たとえば E.E. Evans-Pritchard の The Nuer であり、 E. R. Leach の Political Systems of Highland Burma (Leach, n.d.) なのだ。

一つの段落の中の改行は無視されます。 そして、文字の装飾も簡単です。 ボールド もできますし、 イタリック も簡単です。 打ちけし線 もできます 下付き、上つきも以下のようにすればOKです。 H2O とか 42


2.3 列挙、表

表は、つぎのように書きます。


| 左詰め | 右詰め | センタリング |
|:-     |-:| :-:|
| E.E.Evans-Pritchard| 1935 | The Nuer|
|E.R. Leach | 1954| Political Systems of Highland Burma|

こうなります。


左詰め 右詰め センタリング
E.E.Evans-Pritchard 1935 The Nuer
E.R. Leach 1954 Political Systems of Highland Burma

列挙は、 論文の中ではめったに使わないかもしれませんが、 メモをとるときなどには便利でしょう。


- こんな風にして
- 列挙します
- かんたんですね

次のように表示されます。

- こんな風にして
- 列挙します
- かんたんですね

2.4 脚注

論文を書くのに大事な脚注はつぎのように入れることができます。

その問いは
書くことに対する
確たる基盤をなくしてしまう問いなのである。
[^kitan]

[^kiban]: ここでは、
「ある議論が無限退行を引き起こすならば、
その議論は間違っている」という判断を採用している。

脚注がおわり、ここからまた本文がはじまります。

[^foot]: の部分が脚注の内容となりますが、 脚注のおわりは空行によって示します。 番号はつける必要はありません。

2.5 プレビュー

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2.6 引用文献

データベースをつくるのが一苦労ですが、 それさえつくってしまえば、 何度も使うことができます。 わたしは bibtex 形式を採用していますが、 もっと読み易い形式があるので、 そちらを採用するのがいいでしょう。

以下は bibtex 形式です。

@book{leach-kachin,
    author = {Leach, E. R.},
    title = {Political Systems of Highland
                  Burma: A Study of Kachin Social
                  Structure},
    publisher = {The Athlone Press},
    series = {London School of Economics
                  Monographs on Social
                  Anthropology},
    address = {London},
    year = 1954
}

@book{andaya-arung-palakka,
    author = {Leonard Yuzon Andaya},
    title = {The Heritage of Arung Palakka: A History of
                  South {Sulawesi} ({Celebes}) in the Seventeenth
                  Century},
    publisher = {Nijhoff},
    year = 1981,
    volume = 91,
    series = {Verhandelingen van het Koninklijk Instituut voor
                  Taal-, Land- en Volkenkunde},
    address = {The Hague},
}

あるいは、以下のような形式もOKです。

---
references:
  - id: fenner2012a
    title: One-click science marketing
    author:
      - family: Fenner
        given: Martin
    container-title: Nature Materials
    volume: 11
    URL: "https://dx.doi.org/10.1038/nmat3283"
    DOI: 10.1038/nmat3283
    issue: 4
    publisher: Nature Publishing Group
    page: 261-263
    type: article-journal
    issued:
      year: 2012
      month: 3
---

leach-kachin のキーがついている文献を引用したいときは、 [@leach-kachin] とします。 ここに (Leach, n.d.) をいれる。

3 External Links

Leach, E. R. n.d. Political Systems of Highland Burma: A Study of Kachin Social Structure. London School of Economics Monographs on Social Anthropology. London: The Athlone Press.


  1. Markdown にはいくつも方言があります。 この講義では pandoc 基準でおはなしします。

  2. Windows でエクステンション(拡張子)抜きで ファイルを呼ぶ(じっさいはエクステンションがあるにもかかわらず) という慣習が定着しているようですが、 悪習です。 やめてください。 ファイルはフルネームで(エクステンションをいれて)呼びましょう。

  3. 日本語のファイル名は使わないようにしましょう。

  4. MSWord と違い、 さまざまなプログラムが使われます