2020-07-08 国際哲学学会で「三匹のハエと三人の牢屋仲間」という英語論文を発表した

食事、コンピューター、インドネシアについてのひとり言。 ときどき人類学なども。

[2020-07-08] 国際哲学学会で「三匹のハエと三人の牢屋仲間」という英語論文を発表した

ぼくはインドで牢屋に入れられた。 ぼくの他にあと二人が同じ部屋にいれられていた — ハッサンとクマールという名だ。 三人はたいへん仲良くなった。 ぼくらは大の親友になった。 同値関係と呼ばれる関係がある — それは反射律、対称律、そして推移律のすべてが 成り立つ関係である。 印象主義的に言えば日常的な「同じ」関係を 数学的に表現したものと言えるだろう。 ぼくらの間の関係はこの同値関係だ、と 三人で納得した。 三人に上下はなく、みなが「同じ」なのだ、と。

ある時ぼくらの牢屋に三匹のハエがはいりこんだ。 三匹はいつ迄も牢屋のなかにとどまった。 その内に、 ぼくらはそれぞれが「自分のハエ」をもつようになった — ハッサンにはハッサンの好きなハエが、 クマールにはクマールのハエが、 そしてぼくにはぼくのハエができたのだ。 ハエと人間の関係に関しても、 「これもまた同値関係だ」ということで三人は納得した。 ハッサンとハッサンのハエとは「同じ」なのだ、と。

「ということは」と、 誰かがいった — クマールだったかもしれない。 「けっきょくぼくたち六人 (ハエもまた「一人二人」と数えるとして)は みな『同じ』であり、 区別ができないんだ」と。 「この六人と、その間の関係とで 成立する数学的世界を考えることが できるだろう」 — こんどはぼくがしゃべっていた。 場面はある国際哲学学会だ。 ぼくは 「三匹のハエと三人の牢屋仲間の同値関係」という タイトルのペーパーを読んでいた。 英語だ。 質疑応答の時間になっており、 ぼくは一生懸命へたな英語で質問に答えていた — Let me put it this way …

目が覚めるとまだ雨が降っていた。