2015-08-09 頭を売りに来たはなし

食事、コンピューター、インドネシアについてのひとり言。 ときどき人類学なども。

[2015-08-09] 頭を売りに来たはなし

晩ご飯のあと、いつもの通り、 ザプ(高床式になった「台所」の部分)で リヴァやリン、ハニと雑談してる。 マヌカコ(鶏の鳴き声)が聞こえた。 一番鶏にしては早い。 リヴァとリンが不安そうに顔をみあわせている。 リヴァによれば、 時間はずれのマヌカコは、 「アタポゾ(妖術師)がウズ(頭)をかついだまわっている」印だという。 「誰の頭?」と聞くと、 「もちろんソフィのだ」という。

アタポゾは人を殺すことができる。 殺した人間をアタポゾは喰らうのだ。 その饗宴に他のアタポゾたちも集まってくる。 エンデの人たちが葬式のあと怖がっているのは 幽霊ではない。 村の中を彷徨する、 饗宴にあつまるアタポゾたちである。

饗宴を終えた アタポゾの一人は死者のウズ(頭)をもって 村々をまわる。 ウズを売るためだ。 まちがってウズを買ってしまった家の成員が次の 犠牲者になるという。

「そう言えば・・・」とリヴァが話しはじめる。

センドの息子が死んで4晩目のときだ。 リヴァとハニが家のなかにいた。 (まだ存命だった)母親はもう寝ていた。 家のすぐ外で、 ドーンという荷物をおろすような音とともに 「ほー」というため息が聞こえた。 リヴァが冗談に「うちの母親が年取っているからといって、 こんなところにウズを置くな」と声をかける。 ハニが「(冗談でも)そんなことを言うんじゃない」とたしなめた。 ところがいつまでたっても 外にいるらしい者は返事をしない。 二人はとても怖くなった。 リヴァとハニは、 寝ている母親の部屋にはいり、 三人で寝たという。