国境を越えた商売

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  • 2008-08
  • by morita
  • Oecusse 国境の近くインドネシア側での調 査

以下の内容は、特に説明がなければ、インドネシア 側の住民の語りに基づく。

国境出現後の変化

国境に接しているナパン村の経済状況は、国境の出 現によって大きく変わったといわれる。「ナパンの 人々は dagang kuat(商売上手)」というのが、サ イノニ村の多くの人々の印象。かつてのナパン村は ケファから遠く、より近いサイノニ村の方が 「maju」だった。しかし国境の出現によって、ナパ ン村は東ティモールという外国に最も近い場所となっ た。

現在、正式な許可を取得して、商品をトラックで 運んでいる村人が3人いる。オエクシ側から注文を 受けて、定期的に商品を運び入れる。自動車(ト ラック、ピックアップ)を所有し、大きなキオス ク(「お店のようなキオスク」)を経営している。

そのほか、限られた資本を用いて、燃料や肥料を オエクシに運んでいる者たちがいる。さらに彼ら/ 彼女らの仕事を手伝って、1回あたりいくらで国境 までのジャラン・ティクスの運び賃を得ている者。 ミクロレットの運転手をして、ガソリンを国境そ ばの倉庫まで運んで手間賃を稼ぐ者、国境を越え て人を自動車で運ぶ者、両替商を営む者など。

国境ができる以前、両側の人々は畑仕事や家族の 用事、パサールへの買い物、結婚などで頻繁に行 き来をしていた。ジャラン・ティクスを越えるこ とにはリスクを伴うが、「国境を越えるときだけ 注意が必要だが、国境を離れてしまえば何も不安 はない」ということ。

バイクや自動車

バイク、自動車が運ばれるときは、バイクは国境 に位置する川を渡り、そのままオエクシ (Oecusse) に入れる。 自動車は、予め「ポスで話をつけておく」。自動 車部品、電化製品、農機具、キオスクで販売され る様々な商品がオエクシへ運ばれる。オエクシか ら入ってくるものとしては、酒、米が主だが、他 には各種の廃品も入ってくる。空き缶、空き瓶、 鉄くずは、オエクシからケファ (Kefamenanu) の廃品回収業者の 元に運ばれる。さらに、家畜はオエクシからイン ドネシア側に運ばれ、逆のケースはまずない。牛 革をインドネシア側に運ぶ者もある。

小便たれのミクロレット mikrolet kencing

ケファ (Kefamenanu) から国境までは10,000ルピア。国境そばの 村の間(ナパン、テス、サイノニ)では、1乗り 2,000ルピア。1台のミクロレットは、1日に国境と ケファの間を3往復している。「ミクロレット」と も「ベモ」とも呼ばれる。村人たちにもっとも一 般的な交通機関である、乗合のバスのこと。

ケファに着いたミクロレットは、パサール・ラマ で乗客を降ろしたあとで、ガソリンスタンドに向 かう。ガソリンスタンドは、給油待ちのバイクと ミクロレットが列をなしている。ガソリンスタン ドに着くと、座席の下に入れていた空のジェリゲ ンを、なじみのバイクの男に渡す。バイクの男は、 空のジェリゲンを前に載せると、ガソリンスタン ドからふつうに出て行く。別の場所で、ジェリゲ ンに灯油を給油してもらう。取締りの警官はガソ リンスタンドの正面の木陰に座っているが、特に 何をするわけでもない。ジェリゲンに入れるほか、 ミクロレットのガソリンタンクを使ってガソリン が運ばれる。ミクロレットは1回に40Lを運ぶこと ができる。トラックは、1回に80Lの軽油を運ぶこ とができる。

ガソリンスタンドで、燃料を直接ジェリゲンに入 れてもらうことはできない。

タンクをいっぱいにすると、ミクロレットはパサー ル・ラマに戻り、乗客を乗せて、国境へ向かう。 「ここのベモは、乗客を運ぶことよりも、燃料を 運ぶことで稼いでいる」といわれる。ベモには決 まった乗降場所はないので、道でベモを待ってい る者がいればそこで止まる。一般的には、ベモの 運転手と車掌(コンジャック)は、1人でも多くの 乗客を乗せようと、走行中に常に目を光らせてい る。パサール・ラマを出るとき、車内が乗客であ る程度いっぱいになるまで走り出さないのがそも そものベモの姿だが、国境とケファの間を走るベ モは、乗客が2、3人乗ればすぐに走りだす。

国境そばの村では、週に3回のresmiの日にオエク シ (Oecusse) に運び入れるために、燃料が貯蔵されている。 ベモの運転手は、ジャラン・ティクス (jalan tikus) を使って燃 料を運び入れる者から、ケファからの燃料の運び 賃を得ている。貯蔵場所に到着すると、運転手と コンジャックは車から降りて、タンクのフタを開 いてゴムホースを突っ込んでもう片方からガソリ ンを吸い出す。ホースのもう片方には空のジェリ ゲンを構えている。ジェリゲンが1本満たされると、 倉庫や小屋などの貯蔵場所に運ぶ。

オジェック

「オジェック」とは本来はバイクタクシーのことだ が、jalan tikus では燃料を入れたタンクやその他 の品を国境まで運んで手間賃を得る仕事、それを行 う者のことをいう。道路沿いにある燃料の貯蔵場所 から、ジャラン・ティクスを通って国境まで行くた めには、車両を使うことはできない。人がジェリゲ ンを担いで、暗い山道を運ばなければならない。

ジェルゲン1本(5L)の運び賃は5,000ルピアで、 「1回で12本(60L)を運ぶ者もいる」という。ジェ リゲンを並べて、持ち手のところにカインを通し、 それを肩に担いで結んで一気に運ぶ。夜の間に数 回往復する。彼らは翌朝には、運び終えて空になっ たジェリゲンを、まとめて運んで帰ってくる。大 量のジェリゲンを一度に運ぶその様子は、「外か ら見えるのは、目元と足だけ」で、まるで「歩く ジェリゲン」のようだと。

ジェリゲンを数える単位として「トコ toko」が使 われる。これは「ダワン語のtok(座る)から来て いる。ジェリゲンに入れてずっと保管してある様 子をよく表している。知らないものが聞いても、 まったく意味がわからない。」(BK)

夜行バス bis malam

グロバック(荷車)を用いて、品物を国境まで運び、 手間賃を得る。