Houmeni, Not Many (by A. McWilliam)
タイトルの houmeni は Meto 語で 「香り高い木」、すなわち sandalwood(白檀)の ことを指す。 なかなかにしゃれたタイトルだ。
現在、ティモール島(西も東も)の白檀は少なくなっている。 その上に、 非合法な伐採や 過った施策によって危機的な状況にある ことが示される。 打開策として (1) プランテーションを作る方法と (2)小自作農 (small holder) にまかせる方法とが 比較される。 小自作農に任せる方法が優れている--- たんに農学的に・あるいは農政的にというだけでなく、 社会的にも優れていることを示して論文は終わる。
民族誌はいっさいないが、 白檀栽培の現況を知るには有益な論文である。
白檀栽培の歴史については boxer-topasses、 boxer-fildagoes、 ormeling-56、 nordholt-71、 fox-77、 gunn-history of timor、 therik-thesisなどに詳しいとある。
序
オルメリングormeling-56もフォックスも 白檀は過去のものと言う。
17世紀半ばに白檀はすでに減少しはじめていた。
かつてのはポルトガル交易者あるいは中国人によれば、 ティモールの山々は白檀に埋もれていたとい。
Comparatively small numbers of high quality mature trees can produce abundant quantities of seed and new vegetative shoots. (288)
歴史
(293) 17世紀、交易の利益は王へいった。 再分配で社会にも行き渡っただろう。
(294) 20世紀以前には周辺と中央の間の 政治的なやりとり。
17世紀の交易は王を通じて行なわれていた。 利益は全て王へといたる。 ただし、利益は再分配を通じて、 社会へと浸透していっただろう。 [@mcwilliam-haumeni] p. 293
個人主義的な貿易もある。 McWilliam は 1837年のムーアの文を引用している (p.293):1
The [bee]wax and sandalwood, in the Coupang (Kupang) market, are generally brought by natives of Coupang from the south coast, in the months of December and January. The inhabitants of that part of the country are perfectly uncivilised and do not acknowledge the authority of any European government ... The method of trading with them is very singular, as they very seldom exchange words ... When the prows [boats] arrive off the coast, they land the articles they have for barter in small quantities at a time on the beach, when the natives immediately come down with the produce they have for sale and place it opposite the goods from the prows, pointing to the articles, or description of articles, they wish to obtain in exchange (1837: 8)
白檀の交易は、 ティモールに富 (cloth, firearms and gold) を与えてきた。
先住民から国家の独占へ
(295) 20世紀になる迄は、 ポルトガルもオランダも、 ティモールを効果的に植民地化できなかった。
植民地時代からインドネシア時代まで、 森はじょじょにい国家のものとなっていった。
1916年までに VOC が介在して、 いくつかの地域で 伐採が禁止されている報告がある。 ormeling-56 p. 174
1925年には全面禁止された。
森はすべて swapraja のものとされたのだ。 東ティモールでも同じことが起きた。 (296) ポルトガルが 1925年には 全面禁止した。
(297) 「保護」「保全」 (protectionist and conservatory policies) の 美名のもと、 国家が森の所有者となる。
→ ローカルの利益とはならなかった。
労働提供者が15%をもらう、という 取り決めはあった。 しかし値段が現実よりずっと安く設定されての 上での15%だった。
現代の政治経済における問題
- 白檀は地味な木だ。
- ティモールの二種類の白檀がある。
- 油がとれるまでに時間がかかる(20年から50年)
According to some estimates, mature trees are can produce around 50 kg of dry heartwood but this can take 30 years and more of tending and protection before the oil yeild developes and up to 50 years for full maturity (Ormelig 1956: 172). Trees begin producing heartwood after twenty years and can attain mature heartwood weighs of up to 100 kg at 50 years (Wasito and Andayani 1987).
(p.290) 公式には四つのクラスがある。2
|Class A | Rp 18000/kg (AUD 3.80) |Class B | Rp 15000/kg (AUD 3.00) |Class C | Rp 9000/kg (AUD 1.90)
21世紀のTTSの事例
- TTS (Timor Tengah Selatan) は 白檀の多くとれるところである
- 1992年(違法伐採が多いので) Bupati が伐採を禁止した。
みなが禁令に従った
- (p.301) 中央政府がこの禁令に反対した
- けっきょく、また切り出しが始まった
- しかし、州知事の禁令はまだつづいている
(p.302) これらの施策が白檀にいい影響を与えたかは 疑問である。
白檀の高値はつづき、 それゆえ違法な伐採もまだ続いている。
(p.303) 汚職と関連した 大きな違法伐採がある。 この噂は人々に共有されている。 (p. 304) とりわけ島間貿易 (クパンからスラバヤ)に 汚職の入り込む隙間があるのだ。 さらには、 警官が軍も関与している。
(p.305) ティモール島内の 国境を越えた密輸の問題もある。 Bobonaroの白檀が インドネシア側にもってこられるのだ。 可成りの額になる。4
ティモール・レステの 1年間の収穫は40 トンから50 トンである。
ポリシーの問題
- NTT州政府の独占が問題である
- 個人所有を認めるべきだという意見が共有されている
(p. 306) 個人所有を認める法律はあるのだが、 さまざまな規制がある。 また値段の6割を政府に 払わなくてはいけない。
公的な値段が低く設定されており、 ブラックマーケットがあるのはあたりまえである。
- 非中央集権化により kabupaten の力がつよくなっている
- 1997年の州知事の5年の禁令はまだ続いている
白檀の未来
(p. 308)
- マイナス
- 今日の経済状況を考えると白檀の未来は暗い
- 違法伐採のために、 白檀が生産レベルにたっするには 一世代が必要だろう
- プラス
- いまでも需要はある
- ティモール島の白檀は質がよいので有名である
2つの選択肢があるだろう:
- プランテーションにするか
- 小農 (small holders) にまかせるかだ
(p. 309) オランダ植民地時代からの遺産であるやりかたを 使えるだろう:
- tumpang sari
- hutan rakyat reboisasi
- hutan kemasyarakatan
(p. 311) 白檀を他の木と混ぜて植える 小農 (small holder) に任せるという方法もある。 これにはいくつかの長所がある。 (p. 311--312)
(p. 312) These features suggest that there are distinct advantages in promoting and [p. 312/3] adapting sandalwood production through existing agro-silvicultural [林学、植林] techniques and then encouraging long-term protection and tending by local farmer producers.
(p. 313) じっさい白檀と焼畑は密接に関連しているのだ。 白檀は、焼畑の跡地に生える。
結論:先住民の権利となんたらかんたら
(p. 314) インドネシアの法制の問題がある。
白檀は minor forest product' で
non-timber product' とされる。
これらに範疇化されることにより、 伝統的にこれまで活用してきた人びとから 活用の権利を剥奪することになる。
白檀が落ちめになるなかで 2つのイニシアティブが考えられる:
- 権利の移動
- 森林ポリシーの変化
(p. 315) けっきょくローカルな人びとが 地域の政府と共同して 動く必要がある。